『ある雨の日に』

ある雨の日
その人は空を飛んだ
真っ暗な空と
ぽつぽつと光る街灯の間に
何が見えただろう

雨粒がアスファルトにたどり着くより早く
雨粒とアスファルトがぶつかる音より大きな音をたてて
アスファルトはその人を受け止めた

夜間飛行と言うには短すぎる数秒で
失う事を許されなかった数十年


よかった
全然よくなんかないんだけど
とにかく、よかった
ふざけんな、って言えるから


ぼろぼろのその人を見て最初に思った




08.9.2